当社は、プラスチックの高度資源循環を実現するための、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が公募する2020年度「革新的プラスチック資源循環プロセス技術開発」に採択されました。他の企業・大学や研究機関とともに、福岡大学工学部化学システム工学科 八尾教授が主導している「材料の再生プロセス」に求められる研究を行います。
リサイクル材料の物性は、バージン材の物性と比べて伸びなどタフネスに関する物性低下が著しく、成形品が脆くなることが課題です。当社ではバルブゲートシステム※を活用した製品成形時の物性低下を抑える技術を開発し、リサイクル材の活用が図れる部材をより広く開拓することで、積極的なマテリアルリサイクルを成形工程からバックアップすることを目指します。
※バルブゲートシステム(エスバンス株式会社)
以下はプロジェクトの全体概要です。
抜粋:革新的プラスチック資源循環プロセス技術開発
抜粋:「革新的プラスチック資源循環プロセス技術開発」事業原簿【公開版】 https://www.nedo.go.jp/content/100953140.pdf
事業のイメージ
事業の概要
材料再生プロセス開発では、「物理劣化・再生メカニズムの解明」、「高度再生・成形技術開発と実装化研究」および「製品化の要素開発」の3つの項目に取り組んでいる。廃プラスチックのマテリアルリサイクルでは劣化による物性低下を要因の一つとして、水平リサイクルされることは限定的であり、カスケードリサイクルが主流である。本開発では、廃プラスチックを新品と同等レベルの物性に再生させることを目指し、プラスチックの再生メカニズムの解明・検証を基盤とし、押出機による成形・製品化までの一貫した技術開発を実施している。 再生メカニズムに関し、従来考えられてきた劣化現象に対し、物理劣化・物理再生理論に基づき高分子同士の絡み合いを促すことが物性向上に寄与することを応力履歴と樹脂内部の微細構造を解析することで明らかにし、押出し・成形・加工の各工程における樹脂の物性再生効果について分析・評価環境を整備し、検討を行っている。
「材料再生プロセス開発(再生メカニズムの解明・検証)」における開発内容
このメカニズムをペレット製造へ応用するに当たり、既存の押出機に樹脂溜まりという押出機内で溶融樹脂の過度の成形履歴を緩和する機構を追設した装置を用いた検証を実施している。これまでの検討からラボスケールの樹脂溜まり付き押出機において複数の樹脂で物性(破断伸び、靭性等)の向上が確認でき、今後、押出機のスケールアップ等の取り組みが期待される段階にある。成形・加工段階については、射出成形条件が物性値を大きく支配していることが基礎的な評価によって明らかになってきた。このため、ラボスケールでの検証で得られた物性向上の条件を反映させるため、成形・加工時の金型内部で流動制御を可能とする装置開発に取り組んでいる。
再生材の実製品への適用可能性の見極めに向け、企業と共同した試行も同時に展開しており、フィルム、ボトル、家電製品等での本技術で製造した樹脂の適用可能性について、前処理として異物除去の必要性等を含めて検討を進めている。
「材料再生プロセス開発(押出機~製品化プロセス)」における開発内容
各項目の中間目標、最終目標は以下の通り。
「物理劣化・再生メカニズムの解明」
中間目標:物理劣化・再生理論の確立、バージン比較 70%の靭性
最終目標:実効的なメソ構造制御を実現できる再生プロセスの原理の構築・バージン材比、90%以上の材料強度(靱性)再生手法の確立
「高度再生・成形技術開発と実装化研究」
中間目標:ペレタイズ条件の検証、高性能押出機の試作、金型も含めた成形条件検証
最終目標:実生産に供することの可能な大型高性能押出機の設計方針を確定・高性能化を維持したまま生産速度を 90%以上に引き上げる
「製品化の要素開発」
中間目標:3 割の企業で製品化の目途達成
最終目標:全参画企業においてリサイクルプラスチックを原料に、製品化あるいは製品化の目途をつける
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