射出成形において時折現れる「ショートショット不良」。今回は、樹脂と空気のやりとりを物語風にしながら、この不良の発生メカニズムを楽しく解説していきます。
樹脂と空気の出会い
ある日、金型の中に勢いよく樹脂が流れ込んできました。しかし金型内には、空気がぎっしり詰まっています。樹脂は空気をどかしながら、流れようとします。
「我々の通る道だ!早くどきたまえ!」と、樹脂は強気に空気に呼びかけます。しかし、空気は困った様子で、「とはいっても…どこに行けばいいのですか!」と、逃げ道を見失っている様子です。
焦る樹脂と逃げられない空気
時間がない樹脂は、だんだんイライラしてきます。「いいからPL(パーティングライン)の隙間でも、入れ子の隙間でも、どこでもいいから早く退くんだ!早く流れないと、我々が金型で冷やされて固まってしまうだろ!!」と急かします。
空気も慌てて逃げ道を探し、隙間から抜け出そうとするのですが、樹脂の勢いが速く、細い隙間だけでは全ての空気が逃げられそうにありません。
押し寄せる樹脂と限界に近づく空気
樹脂は「ええい、早く退くんだ!」とさらに空気を隙間へと押し込みます。しかし空気は、「もう無理です!これ以上押されたら、断熱圧縮で発火してしまいます!」と叫びます。
成形機の圧力波形をモニタリングしている作業者も、異常な射出圧力の高まりに気づきます。
固まってしまった樹脂の嘆き
樹脂は必死に空気を押し出そうとしましたが、次第に冷却が進んでしまいます。「くそ…ここまでか…」と、悔しさをにじませながら樹脂はついに固まり、流れを止めてしまいました。
ショートショットに気づいた作業者
成形品を取り出した作業者は、製品に残された不完全な形状に首をかしげます。「あれ??ショートショットになっている?なぜだろう?」と、不思議そうに製品を眺めます。実は、空気が逃げきれなかったために、樹脂が途中で冷えて固まり、製品が未充填状態となってしまったのです。
ショートショットを防ぐための対策
この物語からわかるように、ショートショット不良の原因は「空気の逃げ道不足」にあります。空気がスムーズに抜けないと、樹脂の流れが阻害され、製品が未充填になってしまうのです。そこで、ショートショットを防ぐためには以下のような対策が効果的です。
エアベント(空気抜き)の最適化金型にエアベントを適切に配置し、空気が確実に逃げられるようにすることが重要です。
射出速度の調整樹脂の射出速度が速すぎると、空気が逃げる間もなく圧縮されてしまいます。適切な射出速度を調整することで、空気が逃げやすくなります。
金型温度の管理金型が冷えすぎていると、樹脂が早く固まりショートショットの原因になります。適切な金型温度で成形を行うことも大切です。
真空脱気装置の導入真空装置を利用して金型内の空気をあらかじめ吸引しておくことで、空気による妨害を最小限に抑えることができます。
樹脂と空気の攻防が繰り広げられる射出成形の世界。ちょっとした工夫で、両者が仲良く共存できる環境を整えることが、不良を減らす秘訣です!
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