製造業界において、製品の生産速度を上げることは競争力の向上に直結します。その中で注目されているのが「ハイサイクル成形技術」です。この技術は、成形サイクルを大幅に短縮し、生産性を飛躍的に向上させる手法として注目されています。この記事では、添付資料を参考に、ハイサイクル成形技術の概要、実施例、メリット、課題について解説します。
ハイサイクル成形技術とは?
ハイサイクル成形技術とは、従来よりも短いサイクルタイムで製品を成形する技術のことです。短時間で高品質な製品を製造するため、冷却、充填、金型設計の最適化が求められます。
目的
生産サイクルの短縮
生産効率の向上
コスト削減
基本アプローチ
金型設計の改良:
冷却回路の最適化。
金型剛性の向上。
成形プロセスの見直し:
スライド機構の高速化。
ランナーレス成形の採用。
設備の高度化:
高速成形機の導入。
自動取り出し設備の整備。
ハイサイクル成形の実施例
事例として、三光合成が取り組んだIMARI TUBE製品のハイサイクル化について紹介します。
成形サイクル短縮のステップ
ステップ1:
目標:15%短縮
実施内容:金型冷却回路の見直し。
成果:サイクルタイム74秒 → 65秒(1型あたりの生産数:42K/月 → 48K/月)。
ステップ2:
目標:50%短縮
実施内容:スライド作動方法の改良。
成果:サイクルタイム74秒 → 35秒(1型あたりの生産数:42K/月 → 90K/月)。
ステップ3:
目標:67%短縮
実施内容:
油圧シリンダーの見直し。
金型鋼材の変更(HPM50 → BE255)。
ホットランナーのバルブ方式への変更。
成果:サイクルタイム65秒 → 20秒(1型あたりの生産数:48K/月 → 158K/月)
ハイサイクル成形のメリット
生産性の向上
成形サイクルの短縮により、同じ時間でより多くの製品を製造可能。
設備利用効率の向上
生産設備の稼働率が向上し、新規設備投資を抑制可能。
コスト削減
短納期対応が可能になり、全体的な生産コストを削減。
環境負荷の低減
ランナーレス成形の採用により、廃材の削減が実現。
ハイサイクル成形の課題と対策
1. 設備コストの増加
高速成形機や専用金型の導入には初期投資が必要。
対策:長期的な投資計画を立て、費用対効果を最大化する
2. 金型の耐久性
高速成形に伴う高負荷で金型の摩耗が進行。
対策:耐摩耗性の高い鋼材を採用し、メンテナンスを強化。
3. 品質の安定性
高速成形による充填や冷却の不均一が発生する可能性。
対策:CAE解析によるプロセスシミュレーションで最適化を図る。
まとめ
ハイサイクル成形技術は、生産性向上やコスト削減に大きく貢献する革新的な手法です。三光合成のIMARI TUBE事例では、サイクルタイムを67%削減し、生産効率を3.7倍に向上させるという成果を上げました。この技術は、製造業界全体での競争力強化に寄与する可能性を秘めています。
今後もハイサイクル成形技術のさらなる進化と普及により、製造業界の効率化が一層進むことが期待されます。
ハイサイクルにて量産実績のある製品(プリンター機器)
Comments