射出成形のプロセスは成形品の寸法精度が非常に良いという特徴がありますが
成形品は冷却工程で収縮するので金型寸法は即成形品寸法ではありません。
これらの収縮は材料ごと、成形条件ごとに異なり一様ではなく、また、成形材料が金型内を流動する方向と、流動直交方向では収縮率に違いがあるので、あらかじめ、この流れと収縮を予想した金型寸法の設定はかなり経験を要する技術となっています。
このように収縮率が成形品精度に影響があるので、収縮率の大きい結晶性プラスチックの精度保持は難しく、収縮率の小さい非晶性プラスチックは比較的精度保持が容易であるといえます。寸法精度が必要とされる成形品は機能が中心となる機械部品であり、機械部品は物理的性質の優秀なエンジニアリングプラスチックが対象となります。
エンジニアリングプラスチックはポリアセタール(POM)、ナイロン(PA)、ポリカーボネート(PC)
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンエーテル(PPE)などであり、これらを使用する時は前もって収縮に関するデータをよく調べておくことが肝要です。なお、弊社では独自の方法で成形材料の収縮率データを取得しております。
射出成形機による成形品の精度はどの位確保出来るのか?
これは金属の切削加工と異なり一概にいうことはむずかしいです。その理由として
成形材料、成形品形状によって精度確保の難易度が異なるからです。
ある実験では数時間連続成形時のショット間の寸法バラつきは極めて少なく±0.02%(3σ)程度ですが、数日の長時間連続成形のショット間の寸法バラつきは±0.2%(3σ)であると報告されています。これはポリアセタールを対象としたもので、長期にわたる連続成形では外乱(ノイズ)によって平均値が移動し、一桁多いバラつきとなり、射出成形機による加工は外乱を受けやすいことを示しています。この実験によると外乱の最も大きいものは金型温度の変動であり、つぎに溶融材料の温度、射出保圧の変動であることが報告されています。
記事作成者:M.O
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