溶融樹脂が固化するときに密度が変化する。溶融樹脂が固化すると、通常、溶融状態に比べて体積が減る。製品全体が一定割合で均等に収縮すれば、成形品は小さくなるだけで、相似の形状となる。しかし、部分的に収縮量が異なると成形品が変形して形状が変わる。こうなると金型の彫り込み寸法を調整するだけでは必要な形状が獲られなくなる。
身近な例を以下に示す。図(a)に示す様に、ジャガイモを油で揚げると変形する。これは、生のジャガイモの中で水分量が分布しているためである。油で揚げると水分が無くなる。ジャガイモは表面に水分が多く、中心部分のそれは少ない。ジャガイモをスライスした物を油で揚げると外側の方に水分が多いためにより大きく収縮する。場所による体積の変化が収縮変形となって見えた結果であり、体積収縮分布が主要因と考えられる。一方、図(b)に示す様にイカを焼くと変形する。変形という現象は同じであるが、そのメカニズムはジャガイモのそれとは異なる。イカの場合は、筋肉を構成する筋繊維がある方向にしか縮めない様な構造のため、ある方向には収縮できるが他方にはしづらいことによって変形が起こっている。これは、筋繊維が収縮方向を決めているということで繊維配向(繊維の向き)が収縮変形の主要因と考えられる。
この様に製品の変形は、何らかの力がかかっていることによって変形しているのではなく、部分的な歪みの分布が全体の変形につながっていると考えられている。この様な考え方は、射出成形CAE(Computer Aided Engineering)の収縮そり変形解析の計算に用いられる現象モデルとして利用されている。
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