成形収縮率の成形条件依存性を直交実験によって評価すると、保持圧力の依存性が大きいことがわかっている。このことは、保持圧力の増加に伴い溶融樹脂の密度が増加に伴う自由体積の減少によって、溶融樹脂が室温まで冷却されるとき単位体積あたりの体積収縮量が減少するためと考えられる。
図1.に保持圧力の変化に対する流動(MD)方向とそれに直交(TD)する方向の各測定箇所における収縮率の変化を示す。ABS樹脂において保圧圧力が上昇すると、成形収縮率は減少することがわかる。これは、保圧圧力の上昇に伴って溶融樹脂の比容積が減少することから、室温、大気圧下にお収縮が少なくける比容積との差が小さくなったためと考えられる。また、TD方向は、MD方向に比べて保圧圧力の上昇に伴って収縮率は、より小さくなる傾向を示す。これは、流動に伴う分子配向により線膨張率に差が出ることにより異方性が生じると考えられる。
図1. ABS部品の充填圧力に対する各種収縮率の分布; ○: 領域1(ゲート付近)の流れ方向
□: 領域2(ゲートから遠い)の流れ方向 ●:領域1の横方向 ■:領域2の横方向
図2にゲートから近い領域(region1)とゲートから遠い領域(region2)の成形収縮異方性の値の保持圧力に対する変化を示す。成形収縮の異方性は、ゲートに近いRegion. 1の方が、ゲートから遠いRegion. 2に比べて小さいことがわかる。このことから、成形収縮異方性は成形品内で分布をもつことがわかる。また、Region.1の収縮異方性は、保圧圧力が60 [MPa]を超えると保圧圧力の影響が無くなりほぼ一定になる。しかしRegion 2の収縮異方性は、影響の無くなる明確な保圧圧力が存在せず、保圧圧力の上昇とともに低下する傾向を示す。このことから、収縮異方性の成形品内における分布は、保圧圧力によって変化すると考えられる。
図2. ABS部品の充填圧による収縮異方性
(■:領域1(ゲート近傍)●:領域2(ゲート遠方))
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