炭酸飲料でわかる!「ガスカウンタープレッシャー成形」とは?
- SANKO GOSEI
- 1 日前
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射出成形の世界には「ガスカウンタープレッシャー成形(Gas Counter Pressure Molding)」という、ちょっと特殊だけれど、非常に頼れる成形技術があります。今日はこの技術を、私たちにとっておなじみの「炭酸飲料」を例にしながら、分かりやすく解説していきます。
1. 成形不良の原因、「気泡」とはなにか?
まずは、なぜこの技術が必要なのかを押さえておきましょう。
射出成形では、溶かした樹脂を金型に高圧で注入しますが、このときに起こる厄介な現象のひとつが「気泡(ボイド)」や「フローマーク(ヒケ、ウエルドラインなど)」です。これらは製品の見た目を悪くするばかりでなく、強度や寸法精度にも悪影響を与えます。
では、なぜ気泡ができるのでしょうか?それは、樹脂を金型に流し込むときに、空気やガスが閉じ込められたり、樹脂の冷却時に体積が収縮して内部に空洞ができたりするからです。
2. 炭酸飲料を開けた瞬間を思い出してみよう

ここで、冷蔵庫から取り出した炭酸飲料を思い浮かべてください。キンキンに冷えたペットボトルを開けた瞬間、「プシュー!」という音とともに細かい泡が一気に湧き上がりますよね。
実はこれ、容器の中に高圧で二酸化炭素(CO₂)が溶け込んでいたのが、フタを開けて圧力が下がった瞬間に気体として一気に出てくる現象です。
この「圧力が下がった瞬間に気泡が発生する」原理、射出成形でも全く同じようなことが起きているのです。
余談ですが、炭酸飲料に氷を入れた際にも気泡が出てくるのは氷を入れたことによる衝撃により気泡が逃げたり、温度が下がることで過飽和状態となって液体の外に逃げざるをえないためだったりするんです。
3. ガスカウンタープレッシャー成形とは何か?

さて、ここで登場するのが「ガスカウンタープレッシャー成形」です。
この技術は、樹脂を金型に射出する前に、金型内部に窒素ガスなどの「高圧ガス」をあらかじめ充填しておき、一定の圧力をかけておくことで、気泡や表面欠陥の発生を抑える方法です。
イメージとしてはこうです:
炭酸飲料のペットボトルにフタをしておけば泡は出てこない(高圧が気泡の発生を抑える)
成形でも、金型内にガスで圧力をかけておけば、樹脂の中に含まれる気体が急激に膨張するのを防げる
つまり、**「ガス圧でフタをして、気泡が暴れないようにしておく」**というわけですね。
4. どんなメリットがあるの?
ガスカウンタープレッシャー成形を用いることで、次のようなメリットがあります:
✅ 表面の光沢性が向上する 流動がスムーズになり、ウェルドラインやフローマークが減少。
✅ 内部の気泡・ボイドの発生が抑えられる 特に厚肉製品ではボイドやヒケが大敵ですが、これを大幅に減らせます。
✅ 発泡成形にも応用できる 樹脂の内部にマイクロセルを形成する超臨界発泡成形(MuCell®など)でも、ガスカウンタープレッシャーは有効。泡のサイズが小さく均一になります。
✅ 樹脂流動の安定化による寸法精度向上 金型内の圧力が一定に保たれることで、樹脂の偏流が少なくなります。
5. どんなときに使うの?
この技術は、次のような場面で特に有効です:
高外観が求められる家電部品(テレビ枠、プリンタカバーなど)
厚肉成形(ヒケが出やすい)
超臨界発泡成形との併用
ガラス繊維強化樹脂(GF)使用時の表面荒れ対策
6. 注意点はあるの?
もちろん、万能ではありません。次のような点には注意が必要です:
ガス供給装置や圧力制御装置の導入コスト
成形サイクルの延長(ガス充填・排気の時間が必要)
金型設計における工夫(ガスの逃げ道確保など)
また、「どれくらいの圧力をかけるか?」、「いつ圧力を開放するか?」といったプロセスの最適化が非常に重要になります。ここが職人の腕の見せどころですね!
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