射出成形における射出圧力とは、溶けたプラスチック(樹脂)を金型のキャビティ(成形品の形を作る空洞)に押し込むために必要な圧力のことです。この圧力は、樹脂を金型内にしっかりと充填し、製品の形状や寸法を正確に作るために非常に重要です。
射出圧力の役割
射出成形のプロセスでは、次のような役割を果たします。
樹脂の流動性を確保
樹脂が溶けていても、金型内部を流れやすくするためには圧力が必要です。圧力が適切であれば、樹脂がスムーズに金型のすみずみまで行き渡り、複雑な形状でもしっかりと成形できます。
製品の寸法精度
射出圧力が十分でないと、樹脂が金型内に満たされず、ショートショット(充填不足)が起こる可能性があります。また、圧力が不十分だと、成形品の寸法や形状が不正確になることがあります。
製品の強度や外観に影響
射出圧力は、成形品の外観や強度にも影響を与えます。圧力が高すぎるとバリが出たり、低すぎるとヒケやボイド(空洞)が発生するなど、品質に悪影響を及ぼします。
因みに、射出圧力を身近なもので例えると注射器で後ろから押す力になります。
この力が大きいと勢いよく液体が飛び出ますが、小さいと液体ゆっくり出てきます。
射出圧力の適切な設定
射出圧力は、成形品の形状、金型設計、使用する樹脂の種類によって最適な値が変わります。一般的には、圧力が高すぎると金型や製品に悪影響を与え、低すぎると製品が十分に成形されません。そのため、成形条件を細かく調整し、最適な射出圧力を見つけることが重要です。
▲射出圧力が高すぎることのデメリット
(a) 金型への負荷増大
高すぎる射出圧力は金型に過度の負荷をかけ、金型の早期摩耗や破損につながることがあります。特に複雑な形状の金型ではそのリスクが高まります。
(b) バリの発生
圧力が高すぎると、溶融樹脂が金型の合わせ面から漏れ出し、バリ(フラッシュ)が発生する可能性が増加します。これにより後工程での追加処理が必要となり、生産コストが上昇します。
(c) 樹脂の劣化
圧力が高すぎると、樹脂内でせん断応力が過度にかかり、樹脂が分解や劣化するリスクがあります。これは製品の物性低下や外観不良(焦げや色ムラなど)を引き起こす原因となります。
(d) ガスや気泡の発生
高圧で急速に樹脂を充填すると、型内の空気がうまく排出されず、ガスや気泡が製品内部に閉じ込められることがあります。これにより、外観や強度に悪影響が出ることがあります。(ガス焼け)
▲射出圧力が低すぎることのデメリット
a) 充填不足
射出圧力が低すぎると、型の隅々まで樹脂が行き渡らず、充填不足(ショートショット)が発生する可能性が高くなります。これにより、製品に欠けや寸法不良が生じます。
(b) 成形品の寸法不良
圧力が低いと、樹脂が冷却・収縮する際に十分な補充が行われないため、製品の寸法が規定値に達しないことがあります。この結果、製品の精度や仕上がりに問題が発生します。(成形収縮率の保持圧力依存性)
(c) ボイドの発生
圧力不足により樹脂が型内で十分に圧縮されない場合、製品内部に空洞(ボイド)ができることがあります。これにより強度が低下し、機械的特性が悪化します。
(d) ウェルドラインの強度低下
圧力が低いと、ウェルドライン(溶接線)が不十分に形成され、製品の弱い部分として現れることがあります。これにより、特に衝撃や引張りに対する耐性が落ちることがあります。
(e) 表面の欠陥
圧力が低いと、表面にヒケ(シンクマーク)が発生するリスクが高まります。また、表面が粗くなったり、均一な仕上がりが得られなかったりすることがあります
このように考えと、成形不良が出ない、必要最小限の射出圧力で成形(量産)することが望ましいと言えますね。
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